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ふかがわにょうぼう

深川女房

小栗 風葉

「新小説」1905(明治38)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,597 字 · 57 页

青空文庫

「かまいたくも、おかまい申されないのでございますからね」と媼さんは寂しげに笑う。

「でも、この間伺った時にゃ大層御馳走になってしまって……」と今さらに娘の縹致を眺めて、「本当に、お仙ちゃんはいつ見ても美しいわね」

「あら、厭な姉さん!」

「だって、本当なんだもの。束髪も気が変っていいのね」

「結いつけないから変よ」

媼さんが傍から、「お光さんこそいつ見ても奇麗でおいでなさるよね。一つは身飾みがいいせいでもおありでしょうが、二三年前とちっともお変りなさいませんね」

「変らないことがあるものですか、商売が商売ですし、それに手は足りないし、装も振りもかまっちゃいられないんですもの、爺穢くなるばかりですのさ」

「まあ、それで爺穢いのなら、お仙なぞもなるべく爺穢くさせたいものでございますね……あの、お仙やお前さっきの小袖を一走り届けておいでな、ついでに男物の方の寸法を聞いて来るように」

「は、じゃ行って来ましょう……姉さん、ゆっくり談していらっしゃいな、私じき行って来ますから」とお仙は立って行く。

格子戸の開閉静かに娘の出て行った後で、媼さんは一膝進めて、「どうでございましょう?」