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ふかがわにょうぼう

深川女房

小栗 風葉

「新小説」1905(明治38)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,597 字 · 57 页

青空文庫

第一、傍がそういつまでも若い気じゃ置かせないからね。だから意気地がないというより、女はつまり男に比べて割が悪いのさね」

「いけねえいけねえ、じきどうも話が理に落ちて……」と男は手酌でグッと一つ干して、「時に、聞くのを忘れてたが、お光さんはそれで、今はどこにいるの、家は?」

「私?」女はちょっと言い渋ったが、「今いるとこはやっぱり深川なの」

「深川は分ってるが、町は?」

「町は清住町、永代のじき傍さ」

「そうか、永代の傍で清住町というんだね、遊びに行くよ。番地は何番地だい?」

「清住町の二十四番地。吉田って聞きゃじき分るわ」

「吉田? 何だい、その吉田てえのは?」

「私の亭主の苗字さ」と言って、女は無理に笑顔を作る。

「え※(疑問符感嘆符、1-8-77)」と男は思わず目を見張って顔を見つめたが、苦笑いをして、「笑談だろう?」

「あら、本当だよ。去年の秋嫁いて……金さんも知っておいでだろう、以前やっぱり佃にいた魚屋の吉新、吉田新造って……」

「吉田新造! 知ってるとも。じゃお光さん、本当かい?」

「はあ」と術なげに頷く。

「ふむ!」とばかり、男は酔いも何も醒め果ててしまったような顔をして、両手を組んで差し俯いたまま辞もない。