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せいぞうとぬま
清造と沼
宮島 資夫
「赤い鳥」赤い鳥社、1928(昭和3)年1月号
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,864 字 · 12 页
――おまけにその間を、自動車が、ブーッ、ブッと、すさまじい音をたてて、新開地のでこぼこ道を、がたがたゆれながら、勢いよく走っていきます。清造はまったくびっくりしてしまいました。
しかし、これでやっと東京へ着いたのだ、と思うと、かれはやはりうれしくなりました。どんなに貧しい人でも、東京へさえいけば、なにか働く道もあるし、りっぱになれるということを村の人たちから聞かされていたからです。けれどもそうして働くには、どこへいって、どんな人に頼んだらいいのか清造にはわかりませんでした。
町の両側の店をのぞきながら歩いても、それらの店の人たちはみんな、朝のかざりつけにせわしそうに働いていました。ぼろぼろによごれた、きたない着物をきている、ちっぽけな子どもなんかに目もくれる人はありません。それほどみんなはせわしかったのです。往来にはつめたい風が吹いているし、今はもう暮れの売出しの時節です。
清造はだまってぼつぼつ歩いていました。お腹もぺこぺこに減っていましたが、なにか買って食べるお金なんか一文も持っていなかったのです。めし屋ののれんの中からは、味噌汁やご飯の香りがうえきった清造の鼻先に、しみつくようににおってきました。