轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
とせんば
渡舟場
豊島 与志雄
――近代説話――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,509 字 · 24 页
眼が熱くうるんできそうだったし、その眼を見られたら、涙が出てきそうな気がしたのだった。板チョコをかじりながら、私は甘い味を楽しむよりも、悲しい思いをした。
兄さんは時折、それもごく稀にだが、チョコレートだの飴だのピーナツなどを、私に持ってきて下さる。私の方では始終、兄さんのお総菜に気をつけている。だけど、おいしい物はなかなか手にはいらないし、たまに手にはいっても、大勢の人のなかで、兄さんだけに上げるというわけにはゆかない。川原さんにしろ中村さんにしろ、もともと親戚同様の懇意な人たちだから、最も乏しい主食だけは別々でも、お総菜はいっしょに拵えることになっている。だから、兄さんだけを特別扱いにするわけにはゆかない。それでも、私は兄さんになるたけおいしい物を上げたいし、いつも気を配っている。そうしたことが、なにか淋しく悲しいのである。お総菜を拵えながら、わけもなく、ふっと涙ぐむことがある。
兄さんが帰ってきた時もそうだった。長い間便りもなく、終戦になっても様子が分らず、ただうち案じてばかりいたところへ、ひょっこり帰っていらした。色が黒く、痩せて、眼ばかりぎらぎら光っていた。