轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

おんしつのこい

温室の恋

国枝 史郎

「ポケット」1924(大正13)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,010 字 · 22 页

青空文庫

しかし私が語ろうとする不思議を極わめた恋愛というのは、決して私とお寿賀さんとの二人の間に醸された所の其様恋愛の事なのでは無いので、何う致しまして私などは、いつも気の利いた恋愛からは仲間外れにされる玉の方で、よくよく運の宜い時でもワキ役にしか廻われないのである。

そして真実に其時の事件でも、私はワキ役に廻わされていた。

事件の始まりは、今も記した、飲食店の美満寿屋からで、或日私は心易すそうに其家の門口を潜ったものである。秋の中央ではあったけれど名に負う信州の高原地帯の木曾の福島であったから、寒さは既に冬に近く炬燵の欲しい陽気であった。主人の仁太郎氏は丁度留守で大振りの欅の長火鉢の前にはお寿賀さんばかりが坐わっていたが私を見ると頷いて見せた。紫のてがらの大丸髷に黒襟をかけた銘仙の袷を丹前の下に着込んでいるのが商売柄途方も無く粋であった。私はノソノソ上がり込んで長火鉢の向う側へ坐わろうとしたが見れば其席は塞がっている。

気高いほど美貌の青年が悠然と坐わっているではないか。

私は其横へ坐わったが言葉を出すことさえ出来なかった。異常に勝れた人間の美は人の声をさえも封じるものと見える。