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みなとについたくろんぼ
港に着いた黒んぼ
小川 未明
「童話」1921(大正10)年6月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,903 字 · 14 页
娘は、人恥ずかしそうに低い声でうたっていました。その唄は、なんという唄であるか、あまり声が低いので聞きとることは、みんなにできなかったけれど、ただ、その唄をきいていると、心は遠い、かなたの空を馳せ、また、さびしい風の吹く、深い森林を彷徨っているように頼りなさと、悲しさを感じたのであります。
人々は、この姉と弟が、毎日どこから、ここにやってきて、こうして唄をうたい、笛を吹いてお金をもらっているのか知りませんでした。それは、どこにもこんな哀れな、美しい、またやさしい、乞食を見たことがなかったからであります。
この二人は、まったく親もなければ、他に頼るものもなかった。この広い世界に、二人は両親に残されて、こうしていろいろとつらいめをみなければならなかったが、中にも弱々しい、盲目の弟は、ただ姉を命とも、綱とも、頼らなければならなかったのです。やさしい姉は、不幸な弟を心から憫れみました。自分の命に換えても、弟のために尽くそうと思いました。この二人は、この世にも珍しい仲のよい姉弟でありました。
弟は、生まれつき笛が上手で、姉は、生まれつき声のいいところから、二人は、ついにこの港に近い、広場にきて、いつごろからともなく笛を吹き、唄をうたって、そこに集まる人々にこれを聞かせることになったのです。