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みなとについたくろんぼ

港に着いた黒んぼ

小川 未明

「童話」1921(大正10)年6月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,903 字 · 14 页

青空文庫

港の方では、出入りする船の笛の音が、鈍く聞こえていました。明るい、あめ色の空に、黒い煙の跡がわずかに漂っている。それは、これから、青い、青い波を分けて、遠く出てゆく船があるのでありました。

その日も、二人のまわりには、いつものごとく、人が黒山のように集まっていました。

「こんないい、笛の音を聞いたことがない。」と、一人の男がいいました。

「私は、ほうぼう歩いたものだが、こんないい笛の音を聞いたことがなかった。なんだか、この笛の音を聞いていると、忘れてしまった過去のことが、一つ、一つ心の底に浮かび上がって目に見えるような気がする。」と、他の一人の男がいいました。

「あれで目があいていたら、どんなかわいい男の子でしょう。」と、ある一人の女がいいました。

「私は、あんな器量よしの娘を見たことがない。」と、他の年をとった、荷物をかついだ旅の女らしい人がいいました。

「あれほどの器量なら、こんなことをしていなくてもよさそうなものだ。あんな美しい娘なら、だれでももらい手があるのに。」と、脊の低い男がのびあがって、あちらを見ながら、いっていました。

「きっと、あれには、だれかついているものがあるでしょう。