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こんとんみぶん
渾沌未分
岡本 かの子
「文芸」1936(昭和11)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,232 字 · 33 页
勇み立って列の中で抜手を切る生徒があると貝原が大声で怒鳴った。
「くたびれるから抜手を切っちゃいかん」
河口西側の蘆洲をかすめて靄の隙から市の汚水処分場が見え出した。
ここまで来ると潮はかなり引いていて、背の高い子供は、足を延ばすと、爪先がちょいちょい底の砂に触れた。
小初は振り返って云った。
「さあ、ここからみんな抜き手よ」
やがて一行は扇形に開く河口から漠々とした水と空間の中へ泳ぎ入った。小初はだんだん泳ぎ抜き、離れて、たった一人進んでいるのか退いているのか、ただ無限の中に手足を動かしている気がし出した。小初が無闇に泳ぎ抜くのは、小初が興奮しているからである。初め小初は時々自分の側面に出て来る薫の肉体に胸が躍った。が、その感じが貝原の小初を呼び立てる高声に交り合ううち、両方から同時に受ける感じがだんだんいまわしくなって来た。反感のような興奮がだんだん小初の心身を疲らせて来ると薫の肉体を見るのも生々しい負担になった。貝原の高声もうるさくなった。小初は無闇やたらに泳ぎ出した。生徒達の一行にさえ頓着なしに泳ぎだした。するうち小初に不思議な性根が据って来た。