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こはん
湖畔
久生 十蘭
「文藝」1937(昭和12)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,180 字 · 47 页
外国へ行ってからは、いよいよ鬱屈して猜疑心が強くなり、思いきった粗暴な振舞をするものだから、嫌い恐れる人間はあッても俺を愛するものはなく、追従して利益を得ようとする奴はいるが、心をうち明ける真の朋友はない。あり余る財産とオノレーブルを抱きながら死灰のごとき索然たる孤独生活を送っていた。
俺の放蕩も畢竟臆病のせいなので、純潔な恋を求めて失望するのが恐ろしく、金銭で買った娼婦内侍のたぐいなら、はじめッから期待もしないから騙されても腹も立たず、俺にとってはそのほうが安心だッたから、それで満されぬ心を胡魔化していたのにすぎぬ。俺は人一倍求愛の心が強いので放蕩も一倍とはげしく、淫佚振りはわれながら眼を蔽いたいほどだった。期待せぬと言いつつ、娼婦の心の中に真実を追い求めて日夜狂奔していたのに相違ない。
そんな風にして、成すこともなく十四年の年月を暮してしまった。先年、父も死に、英国の生活も鼻についてきたので、その年の冬、巴里に移ってパッシーというところに住んでいたが、間もなくある婦人のことで仏国の陸軍士官と決闘せねばならぬ羽目になった。その席に俺だけしかいなかッたら、陳謝哀訴して勘弁してもらったところだが、折悪しく向いのテーブルに公使館の鈴木という書記生がいたので、持前の虚飾心から、心中、生きた気持もないのに、堂々