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こはんていじけん
湖畔亭事件
江戸川 乱歩
「サンデー毎日」大阪毎日新聞社、1926(大正15)年1月3日~5月2日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,335 字 · 137 页
それからです、私のレンズいじりの初まったのは。
私は丁度その部屋にあった手鏡を持出すと、それを使って、レンズの影を屈折させ、畳の代りに、色々な絵だとか写真だとかをかたえの壁に映して見ました。そして、それがうまく成功したのです。あとで、中学の上級になってから、物理の時間にそれと同じ理窟を教わったり、又後年流行した実物幻燈などを知ると、その時の私の発見が別段珍しいことでないのが分りましたけれど、当時は、何か大発明でもした様な気で、それ以来というものは、ただもうレンズと鏡の日々を送ったことであります。
私は暇さえあると、ボール紙や黒いクロースなどを買って来て、色々な恰好の箱を拵えました。レンズや鏡も段々数を増して行きました。ある時は長いU字形に屈折した暗箱を作って、その中へ沢山のレンズや鏡を仕掛、不透明な物体のこちらから、まるで何の障害物もない様に、その向う側が見える装置を作り「透視術」だなどといって家内の者を不思議がらせて見たり、ある時は、庭一杯に凹面鏡をとりつけて、その焦点で焚火をして見たり、又或る時は、家の中に様々の形の暗箱を装置して、奥座敷にいながら、玄関の来客の姿が見える様にして見たり、その他様々のそれに類したいたずらをやっては喜んでいるのでした。