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とろ

瀞

佐藤 垢石

「続たぬき汁」星書房、1946(昭和21)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,908 字 · 30 页

青空文庫

さまざまの条件をよく消化総合して、それを渾然として頭に入れ、理屈にこだわらず、いろいろの場合に対する変化を身につけて鮎と水とに向かわねばならぬのであるけれど、その手ほどきからはじめたのでは、全く釣りにならぬ。

お前は自分を操人形と心得ておれ。そして万事、父の指図の通りに竿を操り、からだを動かせ。そこに私心があってはいけない。つまり、父の教えた方法に自分の工夫をまじえてはならぬのだ。無心でおれ。

こう語ってから、私は竿と糸、鈎などの支度を整えてやった。女の子に、長竿は禁物である。四間一尺五寸の竿から、元竿二本を抜き去って三間の長さとした。道糸は、竿の長さよりも七、八寸長くした。

この浅い瀞の釣り場は、私の目測によれば深さ三尺前後であろう。そこで、鼻鐶上方四尺の点に、白い鳥の羽根で作った目印をつけたのである。

囮鮎を鼻鐶につけてから、竿を娘の手に持たせ、竿の角度は自分の腰のあたりから空に向かって四十五度と思うところがよろしい。そして、囮鮎から上方四尺のところの道糸に結んだ目印が常に水面一寸の空間にあるように、竿先の位置に注意せねばならぬ。この釣り場は極めて緩い瀞であるから、錘をつけない。