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ひとこおりのシャスタさん
火と氷のシャスタ山
小島 烏水
「改造」1929(昭和4)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,333 字 · 16 页
をねぶるばかりであった。
それでも、森林帯に入るとさすがに涼しい、中でもシャスタ樅と呼ばれる喬木の一種は、この山、特有とまでゆかなくても、この山の産として最も名高いのであるが、富士の落葉松を、富士松と呼ぶたぐいであるかも知れない。なお登ると、俗にホワイト・バーク・パイン(白皮松)と呼ぶ喬木が出てくる、高さは二百尺位に達するのは珍らしくはない。土地の人たちは、この森林帯の立派さを艶説しているが、レイニーア火山や、ベエカア火山の、それに競べると、さほどの物ではない。ホールス・キャムプという平地に出で馬を下り、野営の仕度をする、海抜九千尺、水も少しはある。今は(一九二二年の春から)このところに「シャスタ・アルパイン・ロッジ」という、立派な山小舎が建設されたそうで、毎年六月十五日から九月十五日まで「小舎開き」をやって、一年に四、五百人の宿泊者は、欠かさないという話であるが、私たちの登った頃には未だ小舎はなく、シェラ山岳会考案の「睡眠袋」を馬に積ませて来たので、蓑虫のように、その中にすッぽり潜り込んで寝たが、乾き切った小石交りの砂地の上で、日本アルプスのように、柔らかい草原を褥にする贅沢は、思いも寄らず、睡眠不足が祟って、翌くる日の登山には、大分こたえた。