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かじ
火事
小川 未明
「山野に鍛へる少国民」1942(昭和17)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,986 字 · 6 页
宵のうちはみんなが話をしていた茶の間の、柱にかかっている時計は、やがて二時を打ちました。お父さんは、ますます目がさえるばかりでありました。
風の、窓に当たる音がしたと同時でした。ベルのチリンと鳴る音がして、自転車が家の前に止まるけはいがしました。
「信一が、帰ってきたな。」
お父さんは、息子が帰ったと知ると、急に気持ちが軽くなるのを感じました。
やがて、玄関の戸に、かぎをかけて上がってきた信一は、両親の寝ていられるふすまの外に立って、
「ただいま。叔母さんの家からだいぶ離れていましたから、いきませんでした。三軒ばかり焼けて、やっといましがた消えました。」といいました。
「それで、おまえはどうしたのだ。見物していたのか。」と、お父さんは、穏やかな調子で、おききになりました。
「僕ですか、見物じゃありませんよ、消防のてつだいをしました。自転車を他所の家へ預けておいて水を運んだのです。隣組でやるバケツのリレーは、あわてるときは、だめですね。途中で水がみんなこぼれてしまって、いざかけるときには、ほとんどバケツの中に水がはいっていないのです。それに、火は、どんどん勢いよく燃え上がるのでしょう。