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かせいたんけん

火星探険

海野 十三

「サイエンス」1945(昭和20)年12月~1946(昭和21)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,522 字 · 155 页

青空文庫

「そうなんだ。博士の部屋で、電気コーヒー沸しを使ってコーヒーを沸していたのさ。すると博士が“あっ、熱い”と叫んで椅子からとびあがったんだ。見るとね、博士の背中へ何だか棒のようなものが伸びているんだ。それがね、よく見るとコーヒーなんだ。コーヒー沸しの口から棒のようになって伸びているんだ。茶っぽい棒なんだよ。それで僕は、博士の背中にもうすこしでつきそうなその茶っぽい棒をつかんだのさ。ところが“あちちち”さ。両手を火傷しちゃった、そのコーヒーの棒で……。だってコーヒーはうんと熱く沸いていたんだからねえ」

「ふうん、それは熱かったろう」

「ところがコーヒーの棒は、まるで生きもののように、博士の逃げる方へいくらでも追駆けていくのさ。僕は、博士を火傷させては大変だと思ったから、またコーヒーをつかんだ。それから後、何べんも火傷した。どういうわけだろうね、コーヒーは博士ばかりを追駆けまわしたんだ」

「それはそのはずだよ。博士が逃げると、そのうしろに真空ができるんだ。真空ができるということは、そこへコーヒーを吸いよせることになるんだ。ちょうど低気圧の中心へ向って雨雲が寄ってくるようなものだよ」