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かせいたんけん
火星探険
海野 十三
「サイエンス」1945(昭和20)年12月~1946(昭和21)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,522 字 · 155 页
河合がハンドルを握り、その横の席で山木が一生けんめいに愛嬌をふりまき、皆にあいさつのため帽子をふった。
「なあんだ、この間まで道傍にえんこしていた牛乳配達車じゃないか」
「あっ、すげえや。こんな大きな牛の絵をつけて、グランド・カニヨンまで行くのかね。あっちの犬に吠えられてしまうぜ」
「とんでもない戴冠式のお召し車だ」
山木も河合も、弁慶蟹のように顔を真赤にして、はずかしさにやっとたえていた。穴があれば入りたいとは、このことだ。
見送りの善童悪童たちは、ひとしきり赤い声やら黄いろい声をあげ終ると、こんどは車のまわりに集ってきて、手に手に餞別の品物をさしあげ、山木と河合に贈るのだった。
二人は感激の涙に頬をぬらし放しで、かかえ切れないほどの贈物をうけとった。
「おい時刻が来たぞ、きあ出発だ」
見送人の方から注意されて、自動車はいよいよ出発の途についた。道がでこぼこしていて、そこに車が入ると、自動車は異様な悲鳴をあげた。そして車体を前後左右にゆすぶるものだから、例の乳をしぼられながら大きな目をむき長い舌を出している赤斑の牛が、今にも絵の中からとび出して来そうであった。