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かせいたんけん

火星探険

海野 十三

「サイエンス」1945(昭和20)年12月~1946(昭和21)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,522 字 · 155 页

青空文庫

老博士は心配をかくしもせず叫んだ。

「火星までは大丈夫行けましょう。しかし……」

そこでグリーンの声が切れる。

「しかし……どうしたんだ、グリーン。はっきりいえ」

「はい」グリーンは絞めつけられるような声をふりあげ、

「しかしもはや地球へ戻るだけの燃料はなくなりました。まことに遺憾です」

と、悲しむべきしらせをよこした。

「なに、もう地球へは戻ることはできないのか」

さすがのデニー老博士も愕然とした。

これを聞いたとき操縦室の一同は誰も皆、目がくらくらとした。遂に最悪の事態となったのだ。地球へ戻れないとは、ああ何という情けないことだ。

だが、一同はこの悲しむべきでき事のため、さらに悲しんで涙にむせんでいる暇はなかったのである。そのわけは、冷酷なる宇宙塵の数群が、すぐそのあとに引続いて本艇を強襲したからであった。

艇内は混乱の極に達した。はげしい震動が相ついで起った。艇はいまにもばらばらに分解して四散しそうであった。艇内を、ひゅうんと呻ってすごい速力で飛び交う塵塊があった。それは艇内の大切なる器物を片端からうちこわしていった。

乗組員たちは唯も自分の仕事の場所を守ることができなかった。