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かせいたんけん

火星探険

海野 十三

「サイエンス」1945(昭和20)年12月~1946(昭和21)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,522 字 · 155 页

青空文庫

「そうか。君たち少年が本艇に乗ってくれたので、今わしはたいへん気が強い。これはわしからお礼をいうよ」

「はあ、どうしてですか」

河合は腑に落ちないので、問い返した。

「わしはこの年齢であるから、もう先はないが、君たち少年はこれから五十年も六十年も生きられるのだ。わしたちが成功させることができなかった事業は、ぜひ君たち四人の少年が継いで、成功させてほしいものだ」

老博士はしんみりとした調子でいって、河合少年の肩を叩いた。

「はい。皆にそういって、しっかりやります。しかし博士。今度の火星探険はもう失敗ときまったのですか」

河合は尋ねた。老博士のことばがそのように響いたからである。

博士はしばらく黙っていた。白い髭がこまかく慄えていた。やがて博士は口を開いた。

「まだ、はっきりしたことは分らぬ、だがね、河合少年。うまく火星に着陸できたとしても次に火星から地球へ戻るときには新しい宇宙艇を建造しなければならないだろう。これはたいへんな大事業だ。それに君たち少年の力が絶対に必要なのだ。そのことは今に分るだろう。万一のときには、わしの部屋にある緑色のトランク――それには第一号から第十号までの番号がうってあるがそれを君たちに贈るから、大事にしてくれたまえ。