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ひなわじゅう
火縄銃
江戸川 乱歩
「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,117 字 · 19 页
「あの部屋のテーブルの上に、風変りな花瓶があっただろう。あれがつまり証拠さ」そう橘にハッキリ言われても、私にはさっぱり呑み込めなかった。だが、それ以上突込んで聞くのも私には業腹だったし、私は自分の無能を憐れみ、自己嫌悪を感じて黙ってしまった。
その夜、私は床に就く前、部屋の窓を開けて外を眺めたが、その時、窓に添うて闇の中に突立っている怪しい男の姿を見た。
翌日は、幸いに日本晴の好天気だった。
昨日の刑事は二人の巡査を伴って、約束通り一時カッキリにやって来た。右手には問題の火繩銃をしっかり握っている。橘は刑事の背後からついて来る一人の巡査の姿を見ると、その方に近寄り、その巡査の肩を軽く叩いて笑い乍ら、
「昨夜は御苦労でした」
と言った。
それを聞くと、刑事の方がドギマギして、
「実は、まだこのホテル内に犯人が匿れていやしないかと思ったので、見張りをさせて置いたのです」
と、弁解がましい言い訳をした。すると、私の見た怪しい男はこの巡査であったらしい。
さて、一同の顔が離れに揃うと――この中にはホテルの主人もボーイも居たのであるが――今日の主役の橘は、部屋の西南隅にあるテーブルに近寄って、その上の品物を昨日の通り置き並べた。