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ひなわじゅう

火縄銃

江戸川 乱歩

「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,117 字 · 19 页

青空文庫

橘は言葉を改めて、又語り続けた。

「初めは私も火繩銃が机の上に置いてあったり、死人のチョッキが煙硝で黒く焦げていたりしたものですから、或は自殺ではないかとも思いましたが、机の上にあった、二つの品の或る怖ろしい因果関係に気附いて、私は直ぐ自分の考えの間違っていたのを悟ったのです。次に足跡がこの事件に全く関係のない事がわかったので、この事件に犯人のある事を想像する事は、出来ない訳になりました。と、しますと、林君の死はいったいどう解釈したらいいのでしょう。犯人のない他殺とより、他に考え様はないのじゃないでしょうか」

アア、犯人のない他殺。その様な奇妙な事実があるであろうか。一座の人々は固唾を飲んで橘の言葉に聞入っていた。

「私の想像に間違いなければ、林君は昨日正午、中食を終ると二郎君の部屋から弾丸の装填してあった火繩銃を持ち出して、この部屋に戻り、それをこの机に凭れ乍ら弄んでいたのです。ところが、フト、友人に手紙を書かなければならない事を思い出したので、銃を机の上に置いたまま、手紙を書き初めたのです。その時、銃の台尻が恰度この本立の隅に当っていたという事は、この事件に重大な原因を作ったのです。