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かやくせん

火薬船

海野 十三

「大日本青年」(「浪立つ極東航路」のタイトルで。)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,552 字 · 124 页

青空文庫

「残念、残念。宣戦布告がしてないと、ずいぶんそんだなあ」

幹部たちは、ノーマ号と名のるノールウェー船のうえに、すくなからぬ疑惑をもって、ざんねんがったのである。

はたして、一同が見ているうちに、わが駆逐艦松風は、ノーマ号からはなれ、舳をてんじて北の方へ快速力で航行していった。

ノーマ号も、その後を追って北上するかとおもわれたが、どうしたものか、急に針路をかえ南西に転じた。

「あれっ、こっちと同じ方向へいくぞ!」

事務長が、目をぱちくりとやった。

「おい、へんだぞ。ノーマ号は、一向前のようなスピードを出さないじゃないか」

足のない虎船長がさけんだ。

「これじゃ、間もなく本船は、ノーマ号においついてしまいますよ。なにかむこうは、かんがえていることがあるんですな」

頭のいい一等運転士の坂谷が、早くも前途を見ぬいて、船員の注意をうながした。

坂谷のいったとおりだった。わが平靖号は、どんどんノーマ号の後に接近していった。

水夫の竹見は、さっきから船橋の入口に立っていたが、この場の緊張した空気におされて、無言のままだった。

「おや、竹見。なにか用か」

と、かえって虎船長からとわれて、彼は、はっといきをのんで二三歩前に出た。