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てん
点
小川 未明
「新天地」1909(明治42)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,063 字 · 17 页
子供は白墨を握って、再三、爪立をしてはその黒板に白墨を付けようと試みた。けれど僅かに手が付くばかりで充分に達しない。
翁は黙って、子供のする様を傍に立って冷かに見ていた。
子供は、早速考えついて、後方に居並んでいたベンチを一つ引摺って来て黒板の下に置いて、それを足場としてその上に立って、白墨を握って用意した。
翁は、ベンチの上に立った子供を見上た。――短い破れた袴には、雪がかかって湿れている。――足には足袋を穿かずに、指は赤く海老のように凍えていた。翁は、儼かに、
「その黒板にはっきりと三万六千の点数をお書きなさい。」
と子供に命じた。
子供は黙答して、慄える指頭で黒板の片隅から、一つ、二つと小声に言いながら書き始めた。
「成たけ、はっきりと分るように……。」と翁は、いって黒板に書かれた点を睨んで言った。で、自分は足許の椅子に腰を下して、眤と眼を閉って、両手を広い額に当てて瞑想に耽ったのである。白い髭に微かに洩れる鼻息が白く凝ってかかった。
室内は再び寂然とした。
外には、相変らず吹雪の音がする。時計の針はセコンドの刻んで行く音につれて、目に見えぬけれど動いた。