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からすうりのはなとが

烏瓜の花と蛾

寺田 寅彦

「中央公論」1932(昭和7)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,472 字 · 17 页

青空文庫

あれも参考になりそうである。つまりピアノ線の両端に重錘をつけたようなものを矢鱈と空中に打ち上げれば襲撃飛行機隊は多少の迷惑を感じそうな気がする。少なくも爆弾よりも安価でしかも却って有効かもしれない。

戦争のないうちは吾々は文明人であるが、戦争が始まるとたちまちにして吾々は野蛮人になり、獣になり鳥になり魚になり、また昆虫になるのである。機械文明が発達するほど一層そうなるから妙である。それで吾々はこれらの動物を師匠にする必要が起って来るのである。潜航艇のペリスコープは比良目の眼玉の真似である。海翻車の歩行は何となくタンクを想い出させる。ガスマスクを付けた人間の顔は穀象か何かに似ている。今後の戦争科学者はありとあらゆる動物の習性を研究するのが急務ではないかという気がして来る。

光の加減で烏瓜の花が一度に開くように、赤外光線でも送ると一度に爆薬が破裂するような仕掛も考えられる。鳳仙花の実が一定時間の後に独りではじける。あれと似たような武器も考えられるのである。しかし真似したくてもこれら植物の機巧はなかなか六かしくてよく分らない。人間の智慧はこんな些細な植物にも及ばないのである。