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からすうりのはなとが

烏瓜の花と蛾

寺田 寅彦

「中央公論」1932(昭和7)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,472 字 · 17 页

青空文庫

つまり、何となく非現実的な色と光があるのである。これは多分複眼の多数のレンズの作用で丁度光り苔の場合と同じような反射をするせいと思われる。

蛾の襲撃で困った時には宅の猫を連れて来ると、すぐに始末が着く。二匹居るうちの黄色い方の痩せっぽちの男猫が、他には何の能もない代りに蛾をつかまえることだけに妙を得ている。飛上がったと思うと、もう一遍にはたき落す。それから散々玩具にした揚句に、空腹だとむしゃむしゃと喰ってしまうのである。猫の神経の働きの速さと狙いの正確さには吾々人間は到底叶わない。猫が見たら人間のテニスやベースボールは定めて間だるっこくて滑稽なものだろうという気がするのである。それで、仮りに猫の十分の一秒が人間の一秒に相当すると、猫の寿命が八年ならば人間にとっては八十年に相当する勘定になる。どちらが長生きだかちょっと判らない。

これは書物で読んだことだが、樫鳥や山鳩や山鴫のような鳥類が目にも止まらぬような急速度で錯雑した樹枝の間を縫うて飛んで行くのに、決して一枚の木の葉にも翼を触れるような事はない。これは鳥の眼の調節の速さと、その視覚に応じて反射的に行われる羽翼の筋肉の機制の敏活を物語るものである。