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むざん
無惨
黒岩 涙香
「小説叢」1889(明治22)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,602 字 · 56 页
考えも起る併し差当り野原と云えば日比野か海軍原だ、日比谷から死骸をアノ河岸まで担いで来る筈は無し、又海軍原でも無い、と云う者は海軍原へは矢鱈に這入れもせず、又隅から隅まで探しても殺した様な跡は無し夫に一町ばかり離れた或家の塀に血の附て居る所を見ても海軍原で殺して築地三丁目の河岸へ捨るに一町も外へ舁で行く筈も無(大)夫では家の内で殺したのか(谷)先聞たまえと云うのに、爾サ家の内とも、家の内で殺したのだ、(大)家の中でも矢張り騒しいから近所で目を醒すだろう(谷)ソオレ爾思うだろう素徒は兎角爾云う所へ目を附けるから仕方が無い成るほど家の中でも大勢で人一人殺すには騒ぎ廻るに違い無い、従ッて又隣近所で目を醒すに違い無い、其所だテ隣近所で目を醒してもアヽ又例の喧嘩かと別に気にも留ずに居る様な所が何所にか有るだろう(大)夫では屡々大喧嘩の有る家かネ(谷)爾サ、屡々大勢の人も集り又屡々大喧嘩も有ると云う家が有る其様な家で殺されたから隣近所の人も目を醒したけれど平気で居たのだ別に咎めもせずに捨て置て又眠ッて仕舞ッたのだ(大)併し其様な大勢集ッて喧嘩を再々する