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むざん
無惨
黒岩 涙香
「小説叢」1889(明治22)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,602 字 · 56 页
事が有る、最うズッと以前だが博賭徒を探偵する事が有て己が自分で博賭徒に見せ掛け二月ほど築地の博徒宿に入込んだ事が有る其頃丁度築地カイワイに支那人の張て居る宿が二ヶ所あった、其一ヶ所に恐しいアバズレの、爾サ宿場女郎のあがりでも有うよ、でも顔は一寸と好い二十四五でも有うか或は三十位でも有うかと云う女が居た、今思えば夫が恰度此通りの縮れッ毛だ(大)夫は奇妙だナ(谷)サア博賭宿と云い縮れッ毛の女と云い此二ツ揃ッた所は外に無い、爾思うと心の所為かアノ死顔も何だか其頃見た事の有る様な気がするテ、だからして何は兎も有れ己は先ず其女を捕えようと思うのだ、名前は何とか云たッけ、之も手帳を見れば分る爾々お紺と云ッた、お紺/\余り類の無い名前だから思い出した、お紺/\、尤も今未だ其女が居るか居無いか夫も分らぬけれど、旨く居て呉れさえすれば此方の者だ、女の事だから連て来て少し威し附ればベラベラと皆白状する、何うだ剛い者だろう(大)実に恐入ったナア、けどが其宿は何所に在るのだ築地の何所いらに、夫さえ教えて呉れゝば僕が行て蹈縛て来る、エ何所だ