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むざん
無惨
黒岩 涙香
「小説叢」1889(明治22)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,602 字 · 56 页
様にして置ねば安心が出来ません」と云いつゝ四辺の硝子戸を鎖して荻沢の前に居直り、紙包みより彼の三筋の髪毛を取出しつ細語く程の低き声にて「長官此髪を御覧なさい是はアノ死人が右の手に握って居たのですよ(荻)オヤ貴公も夫を持て居るか谷間田も昨日一本の髪を持て居たが(大)イエ了ません谷間田より私しが先へ見附たのです、実は四本握って居たのを私しが先へ廻って三本だけソッと抜て置きましたハイ谷間田は夫に気が附きません初めから唯一本しか無い者と思って居ます」荻沢は心の中にて(個奴馬鹿の様でも仲々抜目が無いワえ)と少し驚きながら「夫から何うした(大)谷間田は之を縮れ毛と思ってお紺に目を附ました、夫が間違いです若し谷間田の疑いが当れば夫は偶中りです論理に叶った中方では在ません、私しは一生懸命に成て種々の書籍を取出しヤッと髪の毛の性質だけ調べ上げました(荻)無駄事は成る可く省いて簡単に述るが好いぜ(大)ハイ無駄事は申しません先ず肝腎な縮れ毛の訳から云いましょう髪の毛の縮れるには夫だけの原因が無くては成ぬ、何が原因か全体髪の毛は先ず大方円いとした