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むげつものがたり

無月物語

久生 十蘭

「オール讀物」1950(昭和25)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,485 字 · 36 页

青空文庫

泰文は手なづけていたあぶれ者をやって、天羽を車舎にひきこむと、いつの間にそんなものを作ったのか、十字にぶっちがえた磔木に縛りつけ、まず鞭で精一杯に撲りつけた。

「本当のことをいってもらいたい。保平が朝霞のところでなにをしていたか、あなたは知っているはずだ」

「この二十日ばかり、保平殿は私を疎外し、打明けたことをいってくれないからなにも知らない」

泰文は天羽の手首を括って繩の端を梁の環に通し、あぶれ者にその綱を引かせた。天羽は床から指四本のところまで吊りあげられ、十五分ばかりは頑張っていたが、腕が抜けそうになったところで呻きだした。

「おろしてください、知っているだけのことを言います」

天羽をおろすと、あぶれ者どもを車舎から追いだし、二人だけになったところで、いかめしく促した。

「さあ言え」

「保平殿の供をして、北ノ坪へ三度ばかり行ったが、それ以上のことはなにも知らない。と申すのは、明け方まで泉のそばで待っているのが例だからです」

あぶれ者が呼びこまれ、天羽はまた梁に吊りあげられた。こんどはすぐ降参した。

「本当のことをいいます。保平殿が北ノ方とねんごろにしていることは、夙くから気がついていた。