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むほうもの

無法者

豊島 与志雄

「中央公論 文芸特集」1951(昭和26)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,837 字 · 24 页

青空文庫

」

「へえー、大袈裟だね、意思表示とは。」

「君になら、打ち明けて言ってもいい。君が知ってる通り、僕はひどく酒を飲むし、むちゃくちゃに酔っ払うこともある。酔っ払った時のことは、たいてい忘れてるから、こっちは平気なものだ。どんなことをしようと、どんなことを言おうと、構やしない。然し、あとになって、ぽつりと何かを思い出すことがある。気障な言い方をすれば、忘却の海の水面上に出てる岩のようなものだ。それが、途方もないものだの、滑稽なものなら、まだいいが、たいへん気恥しいもののことがある。その気恥しいものを、それだけぽつりと思い出すと、とてもやりきれなくて、わーっと叫び声を立てたくなる。夜中にふと眼を覚して、わーっと叫びたくなることがある……。君にはそんな経験はないかね。」

「そりゃああるよ。酒飲みはたいていそうしたものだ。珍らしくもない。」

「ところが、その中で一番気恥しいのは、やはり男女関係のことだ。僕は商売女を相手に、ずいぶん道楽をした。然し、素人の女は敬遠してきた。ところが、どういうものか、年をとって性的行為にあまり魅力を感じなくなるにつれて、素人の女に対する敬遠の念が薄らいできた。