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ぶらいはうたず

無頼は討たず

山本 周五郎

「キング」大日本雄弁會講談社 、1936(昭和11)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,446 字 · 23 页

青空文庫

「へえ……ひどく紛擾しそうな話だの」

「ひと荒れあるだね、久しく親分衆の出入りを聞かなかっただが、今度はどうやら血の雨が降りそうだ――御覧なせえまし、あっちの茶店へ来ているのは佐貫屋のお身内衆でね、今日その江戸へ奉公に出ていさしった半太郎どんが帰ってござるので、ここまで迎えに出さしったと云う話だ」

「おや、そう云えば向うの皆さんが、道の方へ出て来なさった……」

「それじゃ息子どんが見えたずらよ」

老爺と客は軒先へ出て行った。

街道をやって来る若者がある。

背丈五尺四五寸はあろう、緊まった体つきで顔の色白く、眉の濃い眼の涼しいきりりとした男振だ、旅支度で左手に笠、両掛を肩にしてやって来る。これが今、茶店の話に出た佐貫屋の半太郎である。

茶店からばらばらと出て来た、吉蔵、平吉、倉次、丹三、久太、又二郎という佐貫屋身内の頭株をはじめ、十人ばかりの若いのが、ずらりと並んで、

「へえ、お帰りなせえまし」

「若親分お帰りなせえまし」

口々に云いながら頭をさげた。半太郎はそれを見ると両掛を肩から下して、

「これは吉蔵さん始め皆さん、態々お迎え下すって有難う存じます」

丁寧に会釈をした。