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むだい(いち)
無題(一)
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 20,502 字 · 41 页
嬉しそうにして出て行きました。詩人はほほ笑みながら、今日は何をして何をしてと上の方を見ながら思って居ました。母は水色のかるそうなそして白いかおに似合う着物をもって来ました。詩人はそれを着て御飯を飯べて、庭づたいにローズの居る窓の下に行きました。ローズの部屋の窓は低くて花園は前にあり、窓の中にはローズが一番窓に近いイスによって一心に何かよんで居ました。詩人は、ソーと窓から頭を出して見るとローズは一寸も気がつかない様子、ソーと身をうかせて手をのばして、そしてその柔な、うるおいのある頬を一寸小指のさきで突きました。そして又すばやく体をかくしてダリヤの色の中に身をうずめました。
ロ「オヤ、誰」若々しい声が窓の外にもれました。そしてその力のあるさとい目は赤い色の中にうずくまる小さいそして形のいい水色の体を見出しました。
ロ「お早う、そんなにして居て貴女のその美くしい水色の着物がそのいやな色の花の汁にそんでしまうと大変よ、早く出て来て私が今朝貴方のために二度もあるいたお礼をしてちょうだい」
詩「バア、お早う、夕べは失礼、おかげでいい夢を見ましの」
若い美くしい人は朝日に小指の先をすかせながらまぶしそうに手をかざして云いました。