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えんとつとやなぎ

煙突と柳

小川 未明

「芸術自由教育」1921(大正10)年3月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,104 字 · 7 页

青空文庫

私は、終日雨にさらされていることもありました。また、真っ暗な晩、風に吹きつけられて、身をゆすぶられていることもありました。もし、こうして、だれもかまわんでいたら、私の体には、いくつも小さな穴があいてしまって、もはや永久に、役に立たなくなるであろうと悲しんでいました。

虫や鳥などは、私をばかにしました。鳥は、よく私の頭の上に止まって、内をのぞいて見ながら、

「こんなにきたなくては、巣も造れない。」といいました。

くもは、わがままかってに、私の内側にも、また外側にも網を張りました。もとより私に、一言の断りもいたしません。それほど、みんなは私をばかにしたのです。

そのうちに、夏もゆき、秋がきました。秋も末になると、ある日のこと、ペンキ屋がきて私を美しく、てかてかと塗りました。私は、思いがけないりっぱな着物を着たのでうれしかった。また二、三年は、どんな雨や、風にも負けないと思ったからです。

冬がくると、急に私は、人間から大事にされました。私の内部のすすや、あのくもの巣などは、きれいにはらわれたのです。それからというものは、なんという私の生活の変わり方であったでしょうか。