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つばくろ(つばくろ)

燕(つばくろ)

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1960(昭和35)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,395 字 · 52 页

青空文庫

「若い軍鶏のようだったな、とさかを振り立て、羽毛を逆立てて、――いま考えるとまさに若い軍鶏そのものだったよ」梶本はその軍鶏の姿を空に描いてみるような眼をした、「――この佐藤ひとりはべつだったがね」

襖をあけて、老女のいよが云った、「庄野さまおみえになりました」

「やあ、――」はいって来た庄野は、梶本を見、渡貫を見て、なにか云おうとしながら咳きこんだ、「やあ、これは」と咳のあいまから云った、「これは珍しい、そこにいるのは梶本ではないか、梶本源次郎だろう」

「雅号は枯泉」と又左衛門が云った、「絵師になったということを忘れたのかね」

「ああ」と庄野は首をかしげた、「そんなことだったかな、私はずっと江戸詰だったから、国許のことは記憶がうすれてしまってね」

そして渡貫義兵衛に挨拶し、又左衛門の示す席に坐った。渡貫もこっちへ来て座につきながら、今日は珍しい顔ぶれが集まるが、なにかわけがあるのか、と又左衛門に聞いた。庄野の帰国祝いだ、と又左衛門が答えた。庄野が江戸家老を辞して帰国したのを機会に、あのころのなかまで夕餉を共にしようと思い、京から梶本も呼んだ