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ばくやくのはなかご
爆薬の花籠
海野 十三
「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页
あのとき、電灯が一度消えて、二度目についたときには、トラ十のすがたはなく、卓上は鮮血でそまっていた。それから間もなく、雷洋丸は爆沈し、彼はもう少しで、命を失うところだったのだ。雷洋丸事件ということばをきくと、黒川は今でも、すぐ身ぶるいがはじまる。
「団長さん。あの事件のとき、あたしたちの食卓に、あのとおりの花籠がのっていたのよ。そして、一度停電して、二度目に電灯がついたときには、その花籠はなくなっていたのよ。そして、卓上には、あのおそろしい血が」
「ああ、それから先は、もういうな。わしは、それを思うと、身ぶるいが出るのだ」
「あたしは、あの花籠を見たとたんに、身ぶるいがおこりましたわ。あんな気味のわるい花籠は、すぐ下してくださらない。あたし、芸もなにも、できなくなりましたわ」
「まあ、そういうな。しかし、わしも、やっと思い出したぞ。そうだ。たしかあのとき、わしの目の前に、あのような花籠がおいてあったねえ」
「団長さん。あの花籠は、一たい、どなたが贈ってくださったのですか」
「ああ、あの花籠か。あれは、だれから贈られたのだったかなあ。そうそう、なにしろ大入満員でいそがしいものだから忘れていたが、さっき、お届物屋さんが持ってきたといっていたが、そのとき手紙がついていたのを、読もうと思って、すっかり忘れていた」