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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

そのまま、だれも花籠のことをいいださなかったなら、房枝も、やがてきっと、その大きな花籠のことを、わすれてしまったことであろう。ところが、ひきつづいて、とんでもないさわぎが、まき起ったのだ。

大音響

「おう、いやだ、いやだ。これは血じゃないかな」

とつぜん、ひとりの男が席からとびあがった。それは、同じ曲馬一団の黒川という調馬師だった。

彼が、指をさししめす卓子のうえには、どうも人の血らしいものが、たくさん地図のような形に、白布をそめていた。そして、なおもその附近には、手の形らしい血痕が、いくつも、べたべたと白布のうえについていた。そこは、ちょうど、あのうつくしい花籠がおいてあった前あたりであった。

「おお、これは血にちがいない。ぷーんと、あのにおいがするぜ」

「ほんとだ。だれの血だろう」どやどやと席をたって集ってきた三等船客や、船のボーイたちは、とつぜんふってわいたような怪事件の席をかこんで、くちぐちにさわぎたてた。

「どうも、へんだ」例の黒川という最初の発見者が、きょろきょろと、あたりを見廻した。

「おい、トラ十。トラ十は、どこへいった」彼は、なおもきょろきょろと、あたりを見廻したのだった。