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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

ワイコフ医師は、そういって、急いで、車をまわして立ち去った。

房枝は、惨事の小屋跡へかけよった。

「こらこら、はいっちゃいかん」

警官が、房枝の前に、立ちふさがった。

ニーナが、房枝をかばうようにうしろから抱きとめた。

しかし警官の肩越しに、惨事の跡がよく見えた。一夜のうちに、こうもかわるものであろうか。目をおおいたい惨状であった。天幕の柱が燃えおちて、ひどく傾いている。天幕の燃えのこりが、泥にそまって、地上に散らばっている。火事は全焼とまではいかず、八割ぐらいの火災で、二割がたは焼けのこっていた。だが焼けのこっているものも、どれ一つ満足なものはなかったのである。

「だって、あたし、ミマツ曲馬団のものなんですのよ。ゆうべ、団長の黒川さんが、丸ノ内で負傷したので、それを介抱して、ここにはいなかったんですの。新聞をよんで、いそいで様子を見に戻ってきたんですわ」

房枝は、けんめいになって、事情を説明した。

「なんだって、ミマツの団員で、ゆうべ、ここにいなかったというのか。おお、それは逃がさんぞ」

警官は、房枝の手を、しっかりつかまえた。

「お前の名は、なんというのか」