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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

このところ、さっぱり何もいってこないのですがね」

と署長はいって、部下の顔を見まわし、

「おい、誰か、帆村君の消息を知っている者はおらんか」

だが、誰も、これに答える者はなかった。一体帆村荘六はどこで何をしているのであろうか。房枝をすっかり怒らせてしまい、彼のところから房枝が逃げてしまった後、彼はどこかへ姿をかくしてしまった。

「今日は、帆村君の気にしていた花の慰問隊の大会日ですから、もうそろそろどこからか、帆村君が現われなければならぬ筈ですがねえ」

「昨夜、ここで起った毒ずし事件のことを、帆村荘六に早く知らせてやりたいものだが、連絡がないのじゃ、どうにもしようがないね。ええと、時刻は今、午前八時か」

田所検事は、時計を見ながら、しきりに帆村の出現を気にしている。

「田所さん。すると毒ずしの件の方は、大急ぎで手を入れてみますか、それとも、もうすこし形勢をみることにしますか」

署長は、たずねた。

「そのことだよ」と、田所検事は、改まった顔で一同を見まわし、

「毒ずし事件は、よほど考えてやらないと、せっかくの大魚をにがすことになる。そこで、さっきから考えていたわけだが、ここで一つ、大芝居をうとうと思うんだが」