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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

実は、この工場は、私の主人が建てて、社長をしていますのよ」

「御主人?」

「そうですの。彦田と申します」

「あ、彦田博士! まあ、そうでしたか。すると奥様は、彦田博士の御夫人でいらっしゃつたのですねえ。まあ、目と鼻にいましたのに、すこしも気がつきませんでしたわ。こんないい工場、そしてあんなにりっぱな御主人! 奥様は日本一御幸福ですわねえ」

「そうでもありませんわ、第一、私たち二人きりで子供がありませんもの。こんな不幸なことはありませんわ。まあとにかく、皆さんこっちへお入りになって、しばらく、休んでいってくださいまし。お茶の用意をしてございますから」

道子夫人は、そういって、房枝たちを工場の応接室へ案内した。そこには、心づくしのお菓子と茶が並べられてあった。

房枝は、その厚意に感激しながら、夫人のそばで茶を御馳走になった。

「房枝さん。いつも私が、お話したいと思いますが、むかし、主人との間には、一人のかわいい女の子がいましたのよ」

「そのようなお話を伺いました。で、そのお嬢さまは、どうなすったのでございます」

「おはずかしい身の上ばなしになりますが、その当時、研究狂といわれた主人と私はその日の食べものにも困り、そのうえ私が病気になってしまい、一家はどん底の暗黒におちました。