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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

だが、いま房枝はそんなことはどうでもよかったのだ。丸窓の外に、暮れていくものしずかな、そして大きな夕景の中に、じっと、いつまでもいつまでも、とけこんでいれば、よかったのであった。房枝にとって、それは、母のふところにだかれているような気がしてならなかった。

「あたしのお父さま、お母さま。日本へかえったら、こんどこそ、めぐりあえるでしょうね」

房枝は、唇をかすかにうごかし、小さなこえで、そういってみた。

(だめ、だめ。君の両親は、もうこの世の中に、生きてはいないのだ)

そういって、顔見知りの警官が、気の毒そうに、頭を左右にふるのが、まぼろしの中に見えた。

「まあ、やっぱり、房枝のおねがいごとは、だめなんでしょうか」

(そうとも、そうとも。もう、あきらめたまえ)

「ああ」

彼女のまぶたに、あついものが、どっとわいてきた。そして、頬のうえを、つつーッと走りおちた。目を、ぱしぱしとまたたくと、丸窓の外に、黒い太平洋は、あいかわらず、どっどっと左へ流れていた。房枝のわびしい魂はどうすることも出来ないなやみを包んで、いつまでも、波間にゆられつづける。

「うわーっ、腹がへった。