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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

全くもう一歩というところであった。あぶなかった。あぶなかった。

すると、房枝は、どうしたであろうか。両親のため国家のため、房枝は、爆薬の花籠と共に沼の中に身をおどらせ、そこに一命を終ろうとしたが、そのとき、ようやく追いついたスミ枝が、房枝のうしろから引き留めて彼女の一命を救った。そして籠だけを、沼の中になげこんだの、であるが、その花籠がついに不発に終ったことは、みなさんも既に御存じのとおりである。二人が、沼のそばにうち重なって、はあはあと息を切っているところへ、彦田博士夫婦も、ようやく駈けつけた。

「おお、房枝さん、いや、あたしの可愛いい小雪」

「お母さん」

「お父さんの方も、よんでおくれ」

房枝、いや彦田小雪は、右と左とから両親にとりすがられ、まるで夢を見てるとしか思われなかった。

もうこの世では望みのないと思っていた両親に、めぐりあえたのであった。いや、しかもその両親は、名実ともにじつにりっぱな両親であったことは、小雪の幸福であった。

小雪は、今は、もちろん両親のもとに、幸福に暮し、そして孝行に身をささげているが、仲のよかったスミ枝も、その妹として彦田博士の養女となり、同じ屋根の下に、思いがけないよろこびの日を送っているという。