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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

しかし帆村探偵の姿は、もうそこにはなかった。彼は風のように、いつともしれずこの部屋を出ていったのであった。

雷洋丸の船腹の損傷は、意外に大きく船は見る見る左へ傾いた。機関部もやられてしまって、船内の電灯は一時消えた。甲板には、救命艇の位置へいそぐ船客たちが、互いにぶつかり転り踏みつけあい、くらがりの中に、がやがや立ちさわいでいるばかりだ。

沈没までに、あと二十分とは、もたない。

房枝は、どこにいる。ニーナ嬢は、なにをしている。帆村探偵は、どこへいったのであるか?

このさわぎの中に、くらがりのマストのうえで、獣のように、からからと声をたてて笑いつづける者があった。誰も、さわぎの最中のこととて、この怪人物に気づく者はなかったが、この人物は、意外も意外、それは死んだとばかり思っていたトラ十であったではないか。

沈没迫る

ああ。なんという不運な雷洋丸よ!

もうあと一日たてば、母国の横浜港にはいれるところまで、もどってきたのだ。ところが、とつぜん、この大遭難である。これを不運といわないで、どうしようぞ。

なぜ、第一船艙が、とつぜん爆発したのであろうか?