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ばくやくのはなかご
爆薬の花籠
海野 十三
「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页
その中でも房枝自身は、他のだれよりもうれしいのであるが。
帆村荘六が、奇蹟的に一命をとりとめて、無事帰りついたことは、新聞で知った。房枝はそののち、なんとかして帆村に会いたいものと、思いつづけたのであったけれど、その帆村の住所を忘れてしまった。だから、手紙を出したくても、出すことができないのだった。
そういう場合には、帆村の記事を出した、新聞社へ頼めば、たいてい、親切に先方の住所を調べ出して連絡してくれるのであるが、房枝は、まだ世間なれしないため、そういう方法のあることを知らなかった。
「ああ、帆村さまにお会いしたいわ。たった一度きりでいいから」
房枝が、そんなことを、しきりに考えているとき、彼女のうしろを一台の自動車が走りぬけた。そして、そのすこし先で、車は水たまりにとびこんで、ひどい音をたてて水をはねかせた。
「まあ、しつれいね」
房枝は、あっといって、自分の服をあらためてみたが、いいあんばいに、べつにどこにも、泥水がとんでいなかった。
その自動車はそのまま、どんどん走っていったが、しばらくいくと、辻を左にまがって、極東薬品の塀にそって進んでいった。