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はちゅうかんじけん
爬虫館事件
海野 十三
「新青年」1932(昭和7)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,914 字 · 38 页
理窟からゆけば、どうしても調餌室の連中が疑われてくるのであるが、北外の話では疑うのが無理である。すると、残るのは何者かが調餌室の人たちに嫌疑を向けるために、万年筆を落し、釦を調餌室の前に捨てたとしかかんがえられない。何者がやったことかは知らぬが、そうだとすると、犯人は実に容易ならぬ周到な計画を持っていたものと思われる。
そこで帆村は大事にしていた切札を、ポイと投げ出す気になった。
「北外さん。隣りの爬虫館の蟒どものことですがね。皆で九頭ほどいますが、あれに人間の身体を九個のバラバラの肉塊にし、蟒どもに振舞ってやったら、嘸よろこんで呑むことでしょうな」帆村は北外の答えを汗ばむような緊張の裡に待った。
「うわッはッはッ」北外は無遠慮に笑い出した。「いや、ごめんなさい、帆村さん、あの蟒という動物はですな、生きているものなら躍りかかって、たとい自分の口が裂けようと呑みこみますが、死んでいるものはどんなうまそうなものでも見向きもしないという美食家です。ここでは主に生きた鶏や山羊を食わせています。貴方は多分園長の死体のことを云っていられるのでしょうが、バラバラでは蟒の先生、相手にしませんでしょうよ」