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はちゅうかんじけん

爬虫館事件

海野 十三

「新青年」1932(昭和7)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,914 字 · 38 页

青空文庫

「そうです」と帆村は三つの大きな細長いタンクを指して云った。「このタンクを直ぐに開いていただきたいのです」

「そりゃ君」と鴨田はキッとした顔になって応えた。「さっきも言ったとおり、これを直ぐ開けたんでは、動物が皆斃死してしまいます」

「しかし人間の生命には代えることは出来ません」

「なに人間の生命? はッはッ、君は此のタンクの中に、三日前に行方不明になった園長が隠されているのだと思っているのですね」

「そうです。園長はそのタンクの中に入っているのです!」

帆村はグンと癪にさわった揚句(それは彼の悪い癖だった)大変なことを口走ってしまった。それは前から多少疑いを掛けていたものの、まだ断定すべきほどの充分な条件が集っていなかったのだ。怒鳴ったあとで大いに後悔はしたものの、不思議に怒鳴ったあとの清々しさはなかった。

「君は僕を侮辱するのですね」

「そんなことは今考えていません。それよりも一分間でも早く、このタンクを開いていただきたいのです」

「よろしい、開けましょう」断乎として鴨田が思切ったことを云った。「しかし若しもこのタンクの中に園長が入っていなかったら君は僕に何を償います」