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かたおなみ

片男波

小栗 風葉

「文藝倶樂部 第二巻第九編臨時増刊 海嘯義捐小説」博文館、1896(明治29)年7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,792 字 · 6 页

青空文庫

お前が源様を思う方が深いと見える。」

と辞半にそっと睚を推拭えり。

「だが、俺はもうこの上お前を思いようはない。真によ、俺はお前の事を思凝に思凝めて、気が狂いそうだ! 命も奪られそうだ! いっそ一思に死んでのけたら、この苦しいのが失なるだろうと思って、毎日ここへ来ては飛込もうかと思うけれど、さて死のうとすると、どうもお前を遺いて死ぬのが残念で、お前と一緒でなくては死ぬにも死なれねえ。歴とした亭主のあるお前に、俺もまあ何という因果な事だか、自分ながら訳が解らねえ!」

「もうもう、そんなことは云わないで……。」

とお照は聞くに堪えざる如く、湿める声を顫わして、

「それでなくても、私ゃ、真に私ゃ……。」

「え!」

仙太は目をりて、我にもあらでひしと握緊むる手を、女は慌てて振払い、

「お止しよ! 亭主のあるものをそんな事して、もし私が何して御覧、それこそ私もお前も怖しい……二人が二人、生ちゃいられないような罪人になるじゃないか。」

「その時は、死んでしまうまでの事さ!」

と仙太は事もなげに言捨てつ。

「死ぬたって、私は亭主持だもの。好いてるにしろ、不好にしろ、とにかく源様に任せた体で見れば、自分の勝手に他のお前様と死ぬ訳には行かない。