轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
かたおなみ
片男波
小栗 風葉
「文藝倶樂部 第二巻第九編臨時増刊 海嘯義捐小説」博文館、1896(明治29)年7月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,792 字 · 6 页
藻屑と消行くしばしの命を、ここに繋留むる男女あり。例の仙太とお照なり。二人はひしと抱合いたるまま、互いに辞もなく、ひたぶる運を天に任す折から、何者とも知れず、やにわに戸板に取附きて、
「た、助けてくれ!」
苦しきを絞りて辛くも呼びたる男の声音を、仙太は何とか聞きけん、お照は聞くとひとしく抱合いたる手を振放ちて、思わず後を見返りたる時、取附きたる男のあせりて這上らんとする重量に、戸板は斜に傾きてなかば沈まんとしたり。端なる仙太は不意の傾斜に身を支うる暇なく、あ! と叫びたるまま水の中に陥りしが、辛くも戸板の角に取縋りて。
「手、手、手を引張ってくれ! 手を!」
戸板はしばしも一所に停まらず。
矢の如く闇を衝いて流行くなり。
女ながらも一念力! お照は声を便にしっかと仙太の手を執りて、引揚げんとする時、後より這上らんとする男の、必死ともがく手頭にむずと袂を掴まれたり。
「お照様、ごご後生だ! この、この手を……。」
と次第に細り行く仙太の声に、お照は狂気の如く身を悶えて、執られし袂を振放たんとあせれば、闇に面は見えねど、
「こ、殺すのか! 俺を、お、俺を殺すのか!」