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まきのとみたろうじじょでん
牧野富太郎自叙伝
牧野 富太郎
牧野富太郎『牧野富太郎自叙伝』。同一底本的分册已合并为一书。收入:牧野富太郎自叙伝、牧野富太郎自叙伝。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,045 字 · 185 页
花は黙っています。それだのに花は何故あんなに綺麗なのでしょう。何故あんなにも快く匂っているのでしょう。思いつかれた夕など窓辺に薫る一輪の百合の花をじっと抱きしめてやりたい様な思いにかられても、百合の花は黙っています。そして一寸も変らぬ清楚な姿で、ただじっと匂っているのです。
『植物記』の中にうかがわれるこの言葉、植物への限りない愛情――小学校中退後貧苦と戦いながらも、独学で植物分類の世界的権威となり、八十七歳の今日猶日夜研究にいそしまれる老科学者牧野富太郎先生、われわれは四月十八日当地の植物採集会に臨まれた先生からいろいろのお話を聴く機会を得たのである。
此の日壇上にのぼられた先生は杖がわりの粗末な竹竿を無雑作に壁にたてかけ椅子に腰かけて右手を耳のうしろへ、一語一語自身の言葉を確めるように話される。
牧野「ヤマブキは山吹と書きますが、万葉集では山振と書いてあります。これはヤマブキが山の麓などに沢山咲いていて風に揺ぐのを見てこう書いたのではないかと思います。支那では棣棠(テイトウ)と書きますが、花は八重でもとは日本から渡ったものかと思います。山吹の種類には一重、八重白花、菊花、斑入りのものがありまして、この中白花は奈良公園に咲いていたのを貰い来り、菊咲は本郷の弥生町に咲いて居ったのを見つけ、今私の家に植え