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ぶつりがくじっけんのきょうじゅについて

物理学実験の教授について

寺田 寅彦

「理学界 第十五巻第十二号」1918(大正7)年6月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,765 字 · 10 页

青空文庫

この場合に結果を都合のよいようにこじつけたり、あるいは有耶無耶のうちに葬ったり、あるいは予期以外の結果を故意に回避したりするような傾向があってはならぬ。却って意外な結果や現象に対しては十分な興味をもってまともに立向かい、判らぬ事は判らぬとして出来る限りの熱心と努力をもってその解決に勉めなければなるまい。これは一見生徒の前に自分の無知を表白するように見える。ことに中学程度の生徒には教員の全知全能を期待するような傾向があるとすれば、なおさら教員の立場は苦しい訳であろう。しかしそれはほんの一時の困難であろうと思われる。一通りの知識と熱心と忍耐と誠実があらば、そうそう解決のつかぬような困難の起る事は普通の場合には稀である。そのうちに生徒の方でも実験というものの性質がだんだん分って来ようし、教員の真価も自ずから明らかになろうと思う。そういう事を理解するだけでもその効能はなかなか大きいものであろう。これに反して誤った傾向に生徒を導くような事があっては生徒の科学的の研究心は蕾のままで無惨にもぎ取られるような事になりはしないかと恐れるのである。

以上はただ一個の学究の私見で一つの理想に過ぎない。