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ぶつりてきしゅうだんてきせいかく
物理的集団的性格
中井 正一
「美・批評」1931(昭和6)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,301 字 · 13 页
カントの理性を導火とし、フィヒテの自我を爆薬とし、ルッソーの自然を坑道とし、フランス革命の硝煙をもって戦いとった自我の自由が、百年の中にかくももろく潰滅しようと誰が思いえたであろう。一八三〇年の七月にハイネたちが北海の浪を焔をもって充たしうるとまで叫んだあの情熱が、かくもはやく燃焼しつくし、一かたまりの底あつい灰と化しようと誰が考ええたであろう。
しかし、事実は事実である。
限界を越えたる自我の自由が経済領域で犯せる越権、芸術において、哲学において、道徳において犯せる越権が、それに価する刑罰を課した。人は天才の名によって、非合理性の問題を意味づけんとし、恣意が独創の外貌をつけはじむる時、すでに情熱は一つの発熱をもたらし、不安と灰の感触の中に浸されたのである。そこに一九二〇年代の青白い憂愁と、高雅なる陰鬱がある。
狂えるムンクはその一つの記録である。
それは集団の組織の中にみずからを要素とする道を知らない、偉大なる個人の記録である。破砕せる巨大なる個人の記録である。歴史の深さはそこにある。
ゲオルゲ・グロッスはすでに別の道を歩む。彼はすでに彼でなくして、社会的集団のいっそうの視覚を自己代表する。