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とくしゅぶらくのはんざい
特殊部落の犯罪
豊島 与志雄
「新小説」1922(大正11)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,455 字 · 15 页
お前が世話あしてるちゅうのを、えれえほめて……うむ……。」
涙がぽたりと落ちた。鼻がつまったのを、手の甲でちんとすすり上げて、徳利の酒をきゅーっと息の続く限り吸った。
「お前が世話あしてくれなきゃあ、俺死んじゃったかなあ……。」
黒目の据った眼付でじっと見つめた。
つるは一歩退りながら、顔をふくらして竈の前に屈み込んだ。
「おらほめられるわきゃねえよ。家の祖母さが後生願えで、お前が可哀そうだからちゅうんで、おらに世話あさしてるだよ。おらが知ったこっじゃねえ。」
久七はきょとんとした顔で、それでもなおじっと彼女を見つめた。紺の筒袖の着物に同じ紺の筒袖の半纒をつけ、胸高に兵児帯をきゅっとしめつけた姿が、開け放した入口から射す、夕暮の薄ら明りに浮出していた。竈の下にちろちろ燃えてる火が、頬の赤い黒目の澄んだ円顔に映り、艶々した黒髪にすっと流れていた。
「お前の髪毛は綺麗だなあ!」
つるはぴくりと肩を聳かしたが、くすりと忍び笑いをして晴々とした顔になった。
「お前にも分るけえ。……おらが髪は誰でもほめるだ。髪は女子の宝だって、平吉が講釈で聞いたちゅうから、おらいつでもよく洗ってるだよ。