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とくしゅぶらくのはんざい

特殊部落の犯罪

豊島 与志雄

「新小説」1922(大正11)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,455 字 · 15 页

青空文庫

木の切株の腰掛へ臀を落付けて残り少ない火で股火をしてると涙がぼろぼろ流れた。

二

つるは何だか落付かない様子だった。九分一くらいの麦飯を焚いてる間にも、二三度表の方を覗きに行った。久七は古新聞紙の切端に包んだ物を寝床の横から取出して、上り口までのっそり起き出て来、彼女の様子を怪訝そうに見守っていた。

飯がぐつぐつむれてる間、つるが一寸上り框に腰をかけた時、久七は新聞紙包みを大事そうに差出した。

「これお前にくれてやるべえか。」

云いながらにこにこ笑ってるので、つるは一寸手を出さなかった。

「そうら!」

投り出すはずみに紙が破けて、椿の実が転り出した。

土間へ転り落ちそうなのを四つ五つ両手で押え止めながら、つるは大きく見張った眼をくるりと動かした。

「こんな物何するつもりだね。」

「お前にその髪毛洗って貰うべえと思っただ。」

つるは首を縮こめて笑いだした。

「こんな青っぺえなあ、あくがあって駄目だあ。お前の髪洗うにゃよかべえ。……おらが拵えてやろ。」

彼女は一寸考えてから、椿の実を包んで表へ飛び出した。

久七は呆気にとられてぼんやりした。それから、くしゃくしゃな渋め顔をして首を垂れた。